取締役の資格
この章では、会社の取締役にスポットを当てて考えていきます。
第一章でも述べたとおり、取締役は株主又は株主総会に委任された会社経営のプロであり、すべての株式会社に必置の機関です。雇われ店長みたいなもので、利益を出さないとオーナーである株主から怒られる立場にあります。
取締役になるためにはその資格に制限があります。取締役になれない者は以下のとおりです。
条文は長くてややこしいのでこれを超約すると、法人、正常な判断能力に乏しい人、会社法関連の罪を犯して刑を終えてから2年を経過しない者(罰金刑・執行猶予中の者も含む)、禁固刑以上の刑に処されて執行を終えていない者(執行猶予中の者を除く)は取締役になることができません。(会社法第331条第1項参照)
細かい要件は条文をご覧いただくとして、特徴的なのは商法では取締役になることができないとされていた破産者が会社法においては取締役となることができる点です。これは、中小零細企業の経営者は銀行から個人保証を強いられることが一般的ですから会社と経営者が破産して共倒れになるケースが非常に多いことから、そのような経営者にも敗者復活のチャンスをあたえる趣旨で破産者が排除されたものです。(余談ですが、この個人保証については民法を改正する動きがあります。)
また、株式会社は、定款に定めても取締役の資格を株主に限定することができません。というのが会社法の原則ですが、例外的に株式の譲渡制限のある会社(非公開会社)はこの限りではありません。つまり、世の中のほとんどの会社は非公開会社ですから、取締役の資格を株主に限定できるということになります。ここでも原則と例外が入れ替わる会社法でありがちなパターンとなります。(会社法第332条第2項参照)
なぜ株式の譲渡制限のない会社(公開会社)は取締役の資格を株主に限定できないのでしょうか?株式の譲渡制限がない会社とうことは、株式を自由に譲渡し、広く投資家から出資を募って会社をどんどん発展させようという会社ですので、経営のプロである取締役を選任するのに、その人選の幅を制限するべきではないからです。一方で非公開会社は比較的規模の小さい会社で株主がそのまま経営を仕切りたいということも考えられますから、取締役の資格を株主に限定することができるのです。
次回は、取締役の任期について考えてみたいと思います。