「役員総論」
前回までは株主総会についてのお話でしたが、この章では株主総会以外の機関について考えていきます。
株式会社には、必ず取締役を置かなくてはなりません。(会社法第326条第1項参照)第三章で説明した株主総会と取締役は全ての株式会社に必ず置かなくてはならないセット商品です。したがって、この2つの機関を定款に定めても登記事項とはなっていません。
それ以外の機関を置く場合には定款に定めなくてはならず、かつ登記事項となります。それ以外の機関とは、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、委員会のことを指します。(会社法第326条第2項参照)
取締役、会計参与、監査役のことを役員といいます。(会社法第329条第1項参照)会計監査人は役員に含まれていません。会計監査人は監査役会や監査役などがチェックした財務諸表を会社から一定の距離を置いた監査のプロとしてダブルチェックする役割を果たしていることから、役員とはなっていないと考えられます。
役員及び会計監査人は株主総会の決議で選任されます。役員については、役員が欠けた場合の補欠役員をあらかじめ選任しておくことができます。(会社法第329条第2項参照)ここでも会計監査人が仲間外れとなっている理由は、役員の場合、その人の「個性」に着目して株主から経営や監査などを委任するのですが、会計監査人になれるのは公認会計士か監査法人という監査のプロとしての「資格」に着目して委任しますので、他の公認会計士や監査法人でも代替性が効く役職であるといえます。つまり、あらかじめ補欠の会計監査役を選んでおかなくても代わりはいくらでもいるでしょうという趣旨です。
ちなみに、会計参与も公認会計士や税理士などに資格が限定されますが、こちらについては「ちょっとうちの会計チェックしてよ」と知り合いの税理士などの「個性」に着目して委任するイメージですので補欠を選べるのです。
補欠役員選任決議の効力は、選任後、最初の定時株主総会開始の時までとなります。つまり、補欠役員は次の定時株主総会までのスペアなのです。同一人物を再度補欠役員としたい場合は定時株主総会開催のたびに決議する必要があります。
次回は、役員及び会計監査人の責任について考えたいと思います。