「株式会社とは?」
この章では、会社法の中で最も重要なテーマである株式会社に関し、そもそも株式会社の存在意義とは何なのかという基本的な部分について考えてみたいと思います。
個人で事業を営む場合、その資金力には限界があります。生活資金とは別途に事業用資金を何千万円、何億円と用意できる人というのは日本国民のごくごく一握りしかいないでしょう。少ない資金では社会的信用も低く、事業拡大をするのは簡単ではありません。そこで一般の投資家(株主)から出資を募り、潤沢な事業資金を調達しやすくするために非常に便利なのが株式会社なのです。基本的には、投資家から集めた資金が株式会社の資本となります。
しかし、投資家に大金を投資してもらうためには、何らかのメリットが必要となります。そのメリットの代表例が配当金です。株式会社は投資を受けた資金で事業活動を拡大し、そこから得た利益を配当という形で株主に還元することで成り立っています。極言すれば、株式会社は株主を儲けさせるために存在するのです。だだし、株式会社のお金なら何でも配当できるというわけではなく、会社債権者保護のため一定の財源規制がかかります。この点については、後述することになります。
このように、株式会社は多くの事業資金を得るためにとても有効な制度ですが、さらに投資家が安心して出資できるようにセーフティーネットが張られています。 個人事業主の場合、事業で出した損失は全て自分で責任を負うことになりますが、株式会社の場合、会社が損失を出しても株主は責任を負いません。株主は約束した出資金を払い込めばそこで責任から解放されるのです。(会社法第104条参照)たとえ巨額の負債を抱えたまま株式会社が倒産したとしても株式会社が作った借金まで株主として責任を負うことはない制度になっています。これを会社法では株主有限責任の原則といいます。
つまり、株式会社の社員は有限責任社員のみで構成されているのです。「有限責任」とは約束した投資を実行することであり、「社員」とは会社の出資者のことをいいます。ちなみに、会社法上、社員というときは全て従業員ではなく出資者という意味で用いられています。この社員が集まって株主総会を開き、役員に経営を委ねていくことになります。
次回はその社員(株主)と経営者(役員)との関係について述べたいと思います。