会社設立の登記が完了すると、まず最初に取得するのが登記事項証明書(商業登記簿謄本)です。しかし、登記事項証明書にはたくさんの種類があり、どの種類の登記事項証明書を取得すれば良いか分からないという声をよく伺います。そこで、登記事項証明書の種類についてご説明いたします。
まず、登記簿謄本と登記事項証明書の違いについてですが、簡単にいうと簿冊で商業登記を管理していた頃のコピーを証明書として交付されるのが登記簿謄本で商業登記がコンピューター管理されるようになってからの証明書を登記事項証明書といいます。
現在は全ての登記所がコンピューター化されていますので、厳密には登記簿謄本とはコンピュータ化以前の閉鎖登記簿謄本のことを指します。しかし、商業登記が完全にコンピューター化したのはここ数年の話ですので、昔から商売をされているお客様は登記事項証明書よりも登記簿謄本のほうが馴染みが深いようです。「昔でいうところの会社の謄本に該当する書類をご用意してください。」というとピンときてもらえることが多いです。
さらに、登記事項証明書には以下の種類があります。
①履歴事項証明書
一番オールマイティーに利用できる証明書です。先ほど述べたコンピュータ化後の登記簿謄本に該当する書類です。現在効力のある登記事項のみでなく、請求日の3年前の年の1月1日から請求日までに抹消された事項等が記載されています。役員の辞任登記をした場合はもちろん、会社合併や会社分割に関する事項も時間の経過により閉鎖されてしまいますので、会社の変遷を調べる際には注意が必要です。実際、私が携わった会社分割が数年後に履歴事項から消えていて青くなったことがあります(^_^;)
②現在事項証明書
文字通り現在効力を有する登記事項が記載された証明書です。ですので、かつて取締役だったがすでに辞任の登記がされている場合などはこの証明書には記載されません。ただし、商号変更及び本店移転については、変更又は移転があった直前のものも記載されています。履歴事項証明書よりも枚数は少なくなりますが、実務上は履歴事項証明書を求められることが多いため、あまり利用することが少ない証明書かなと思います。
③閉鎖事項証明書
抹消した登記記録について記載された証明書です。履歴事項全部証明書を取得すればコンピュータ化後の履歴が全部出ているものと思いがちですが、先に述べたとおり、登記事項が抹消されて数年で履歴事項からも閉鎖されてしまいます。商業登記のコンピューター化から時間が経ってきましたので、今後は建設業の経営管理者の履歴を調べる際にはこの閉鎖事項証明書と閉鎖登記簿も合わせて取得する必要が出てくるケースが多くなると思われます。
④代表者事項証明書
会社の代表者に代表権があることを証明する書類です。昔は「資格証明書」という名称でしたので、実務上は現在も資格証明書と呼ぶほうが一般的だと思います。(現在も資格証明書という本件とは別の種類の証明書は存在するのですがマニアックなので割愛いたします(^_^;))通常1枚で交付されますので、履歴事項証明書が数十枚場合によっては百枚を超えることもある大企業や監査法人などではよく利用されます。また、代表者が会社の代表権者であることを証明すれば良いケース(登記や契約など)でもこの書類がよく利用されます。